NVIDIAは7月22日、医療機器の研究開発に使う物理シミュレーションフレームワーク「Medical Physics Simulation」をオープンソース化したと発表した。手術支援ロボット向けプラットフォーム「Isaac for Healthcare」の一部で、解剖学とデバイスの相互作用をGPU上で再現する。
従来の物理演算に加え、生成AIによる物理シミュレーション技術「Cosmos-H Dreams」を組み合わせているのが特徴で、CUDA・Warp・Newton・Cosmosという既存のNVIDIA基盤の上に構築されている。血管解剖やカテーテル、ガイドワイヤーなど柔軟な器具の動きを再現でき、X線画像の疑似生成にも対応する。今後は内視鏡や尿路デバイス向けの拡張も予定している。NVIDIAが公開したベンチマークでは、8,192個のロボット学習環境を並列実行した場合、GPU専用シミュレーションによって学習にかかる時間が5時間以上から2分未満に短縮されたという。
すでに複数の医療機器メーカーが採用を進めている。CMR SurgicalとCambridge Consultantsは500時間分の臨床データを提供し、軟部組織手術のシミュレーション開発に使っている。Johnson & Johnson MedTechは尿路治療プラットフォーム「MONARCH」のデジタルツイン構築に利用中で、XCath・Inner Logic・Medtronicも開発を進めているという。
オープンソース化の狙いについてNVIDIAは、医療機器メーカーがデータ・モデル・重みへのアクセスを必要としており、それが規制当局の審査に必要な証拠づくりに役立つためだと説明している。裏を返せば、これまでの医療ロボット向けシミュレーションはクローズドな環境で検証されることが多く、開発企業が規制当局に妥当性を示しにくいという課題があったことになる。生成AIを使ったシミュレーションの仕組みに馴染みのない読者は、AI用語総覧でエージェントや生成AIの基礎用語を確認しておくと理解しやすい。





