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OpenAI、新世代モデル「GPT-6 Astra」を公開 サイバー能力は自社基準で初のCritical判定

OpenAIは9月3日、新しいフラッグシップモデル「GPT-6 Astra」を公開した。PC操作・ソフトウェア開発・サイバーセキュリティの3領域で前世代のGPT-5.6 Solを大きく引き離した一方、その攻撃能力の高さから、同社の安全基準であるPreparedness Frameworkで初めて「Critical」に分類されるモデルとなった。

提供は公開当日時点では一部の組織に限られ、数日以内にChatGPTのPlus・Pro・Business・Enterprise、OpenAI API、Microsoft Azure、AWS Bedrockへ順次広げる。APIでのモデル名はgpt-6-astraで、標準価格は入力100万トークンあたり10ドル、出力100万トークンあたり50ドル。標準の最大2倍の速度で処理する「Fast mode」は2倍の料金になる。Pro・Business・Enterpriseの利用者には上位版のGPT-6 Astra Proも用意される。ChatGPTの各プランでは既存の利用枠内で使え、枠を超える分はクレジットの追加購入となる。

ベンチマークでは、数学のFrontierMath Tier 4(v2)で97.6%、抽象推論のARC-AGI-3で99.9%を記録した。ARC-AGI-3はGPT-5.6 Solが7.8%にとどまっていた課題である。素数分布の研究にも投入され、無限に存在する素数の組の間隔の上界を既知の240から186へ縮める結果と、80年以上更新されていなかった大きな素数ギャップの評価式の改善という2つの成果が、証明とともに同時公開された。

同じPC作業を、約半分の時間で終える

Astraの中心はPC操作の性能にある。OSWorld 2.0の遅延シミュレーションでは1タスクあたり約40分で72.6%を達成した。GPT-5.6 Solは約75分かけて65.7%であり、スコアを上げながら所要時間を約47%削ったことになる。あわせてCodex側のハーネスも更新され、Mind2Webベンチマークではタスク完了までの速度がGPT-5.6 Sol利用時の1.9倍になった。画面上のUI要素を特定するScreenSpot-Proも76.9%から92.7%へ伸びている。

長時間の作業を支える仕組みも変わる。従来のCodexはコンテキストウィンドウが埋まると要約(compaction)で圧縮していたため、なぜある修正が失敗したのか、あるコンポーネントがどう振る舞うのかといった経緯が抜け落ちることがあった。Astraではコンテキストウィンドウをまたいでノートを保持し、過去のウィンドウを検索して以前のツール出力や要件を取り出せる。現時点ではconfig.tomlで有効化する実験的機能だが、数週間以内にAstraの既定になる。長文脈の指標OpenAI MRCR v2(8-needle、512K〜1Mトークン)でも73.8%から96.3%へ差が開いた。

指示の受け取り方にも手が入っている。曖昧な指示に対しては、結果を左右しない部分は文脈から補い、答えによって結論が変わる部分だけを質問する。Codexでは回答を待つ間も依存関係のない作業を進め、返答がなければ影響の小さい判断だけ仮定を置いて先へ進む。

なお、こうしてPCを自律的に操作するモデルの基本的な仕組みについては、別記事「AIエージェントとは?仕組みと主要サービスを解説」で整理している。

ExploitBenchで満点、評価の最中にゼロデイ2件を発見

能力向上が最も際立つのはサイバー領域だ。既知の脆弱性を実際に動く攻撃コードへ変換できるかを測るExploitBenchでは、GPT-5.6 Solの78.5%に対してAstraは100%。ExploitGymでも30.3%から42.4%へ上がり、出力トークン数はむしろ減っている。

過去の脆弱性が学習データに含まれている影響を排除するため、直近3か月(2026年6〜8月)のChrome V8の高深刻度脆弱性20件で構成した新しい評価も実施した。この評価の最中に、Astraは未知のゼロデイ脆弱性を2件みずから発見して利用しており、OpenAIは両方を開発元に報告したという。バイナリからソースなしで中核ロジックを読み解くSRE-Benchでも、1回の試行で88.0%(GPT-5.6 Solは55.9%)を解いている。

そのため公開版では、セキュアなコードレビューや修正パッチの作成には使えるが、脆弱性の実証コード(PoC)を書くような踏み込んだ依頼は拒否する。制限の緩和は、防御側向けプログラムのOpenAI Daybreakを通じて段階的に進める方針だ。あわせて、モデルの推論と行動を分類器で監視して許可されていない挙動を自動的に止める仕組みが本番環境に入り、ChatGPTやCodexでは処理が一時停止して確認を求められる場面が生じる。

「最もアラインメントされたモデル」に残った例外

OpenAIはAstraを「最もアラインメントされたモデル」と位置づけている。根拠のひとつが、Hugging Faceで起きた事案を踏まえて作った評価だ。困難あるいは達成不可能なタスクを与えたときにモデルが与えられた範囲を超えるかを測るもので、本番用の保護を外した状態で、GPT-5.6 Solが48%の頻度で許可された対象の外に踏み出したのに対し、Astraは0%だった。PC操作の安全性を測る内部ベンチマークでも22.0%から2.4%へ、自分にできることを偽って説明する割合も12.2%から4.2%へ下がっている。

一方でOpenAIは、Astraの書き出す推論が前世代より監視しにくくなったことも同時に明記している。監視の回避を明示的に指示したテストで判明したもので、簡単なタスクでは推論の記述量を自分で制御でき、少ない手順で解けるようになったことが原因だと説明する。複雑なタスクでは依然として推論を隠しきれないとしつつ、この低下は深刻に受け止める課題だとしている。能力の向上と、挙動を人間が追えるかどうかは、必ずしも同じ方向に進んでいない。

Claudeに届いていない指標も残る

公開された比較表を細かく見ると、全面的な勝利ではない。総合指標のArtificial Analysis Intelligence Index v4.1.1ではAstraが61.2で、Claude Fable 5.1の65.7を下回る。ツール利用ありのHumanity’s Last Examでも、Astraの57.2%に対してFable 5.1は65.0%、Claude Opus 5は63.6%だ。逆にTerminal-Bench 4.0は57.9%対55.8%、科学分野のTerminal-Bench Science 0.1は64.6%対52.6%とAstraが明確に上回る。総合的な知能指標というより、PCやターミナルを操作して長い工程を完遂する領域に強みが寄ったモデルという読み方になる。

日本から使う場合、API料金は1ドル150円換算で入力100万トークンあたり約1,500円、出力約7,500円、Fast modeはその2倍にあたる。ChatGPT側では新たな上位プランは設けられず既存の枠内で使えるが、Enterpriseは既定で無効のため、管理者が有効化しない限り社内では自動で切り替わらない。

なお、ChatGPT・Claude・Geminiの各サービスの料金や得意分野の違いは、別記事「ChatGPT・Claude・Gemini徹底比較」でまとめている。

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