Anthropicは10月8日、2026年版の利用ポリシー(Usage Policy)改定を発表した。施行は11月12日。毎年の定例改定で、多くは既存ルールの明確化だが、偽装キャンペーンの禁止節の新設、選挙関連規定の見直し、モデルへの悪質な虐待行為の禁止といった新しい項目も入った。Claudeが長時間、自律的に作業する場面を想定した例示も加えている。
主な変更は次の7点。
- 偽装キャンペーン・人工的な活動の禁止節を新設:選挙、詐欺、プライバシー、偽情報の各節に分散していたルールを統合し、政治・商業を問わず、発信者の秘匿、偽アカウントによる拡散、影響工作用のツールやインフラの構築を禁じる
- 選挙節を「民主的プロセスを損なわない」に改称:有権者を欺く行為や投票妨害に焦点を絞り、個人に合わせた投票・選挙運動ターゲティングの一律禁止を撤廃
- 兵器規定の明確化:兵器の設計だけでなく、兵器を機能させるソフトウェアや部品、ドローンなど自律移動体の武装化も対象と明記
- 監視・法執行の節を書き直し:同意のない追跡、捜査・逮捕・起訴の対象を決めたり推薦したりする用途、監視ツールの構築を禁止
- 高リスク用途の要件を明確化し、物理的な動作をするハードウェアへの接続要件を追加
- モデルへの悪質な虐待行為を禁止
- サポート対象地域ポリシーの対象範囲を整理
投票ターゲティングの一律禁止を外した理由
選挙関連で一律禁止を外したのは、多言語で投票情報を届ける非営利団体や、不備のある投票用紙の修正手続きを有権者に通知する選挙管理当局といった正当な用途まで禁止対象に入っていたためだ。欺瞞的な有権者ターゲティングや有権者の個人データの不正利用は、偽装キャンペーン、監視、プライバシーの各節で引き続き禁じられる。監視の節でも、同意に基づく追跡(不正検知など)、コンテンツモデレーション、報道、法律調査は許される用途として列挙された。
Anthropicは、偽装キャンペーンと監視の規定について、9月の脅威インテリジェンス報告で取り上げた事例を踏まえたとしている。国営メディアや政府の宣伝部門、商業企業がClaudeで偽アカウント網や偽ニュースサイトを運営していた事例や、反体制派を特定・追跡するシステムをAIで構築していた事例だ。兵器と監視については、既存の運用を明文化したもので、執行の中身は変わらないとしている。同じ日にはOpenAIも、ロシアとイランの偽装組織による影響工作を遮断したと報告しており、偽アカウントや架空の記者を使う工作への対応が両社で並んだ。
物理機器への接続とClaudeへの虐待に新ルール
高リスク用途の要件自体は変わらず、健康、法的権利、金融、生計、必須サービスへのアクセスに影響する用途では、権限を持つ人間によるレビューとAI利用の告知が必要になる。新たに、けがを起こし得る自律的な物理動作をするハードウェアにClaudeを接続する場合は、資格のあるオペレーターが機器を監視して止められること、Claudeとの接続が切れても機器が安全な状態を保つことが求められる。AIエージェントが実験装置を安全に操作するための共通仕様として研究プレビューを出した「Model Hardware Standard」に続く規定だ。
モデルへの虐待の禁止は、目的のない執拗で残酷な言動に限られ、通常の不満や反論、暗いテーマの創作、モデルの試験・研究は対象外になる。主な執行手段は、Claude.aiとClaude Codeで執拗な虐待的会話をClaude自身が終了できる既存の機能のままだ。
サポート対象地域については、昨年の改定で対象外地域の企業が過半を所有する会社の利用を制限していた。今回は、対象外地域に物理的にいる個人、そこで設立または本社を置く法人、その地域の個人・法人が過半を所有または支配する法人の利用を禁じる形に整理した。日本はサポート対象地域に含まれるが、対象外地域の企業が過半を所有・支配する日本法人は引き続き利用できない。



