Googleは10月13日(米国時間)、9月30日に発表したフラッグシップモデル「Gemini 4 Argon」の一般提供を始めた。発表時点ではサイバー防御向けの「Fairwind」プログラム参加組織に限っていた提供先を、API利用者と個人向け有料プランに広げた。同日にはGemini 4の安全性・セキュリティ報告も公開している。
開発者向けにはGoogle AI StudioとGemini APIの有料枠で提供され、モデルIDは「gemini-4-argon」。Android Studioからも呼び出せる。個人向けでは、GeminiアプリとGoogle検索のAIモードでGoogle AI ProとAI Ultraの加入者が使え、エージェント型の開発環境Google AntigravityはUltra加入者向けとなる。企業向けにはGemini for business、API、Antigravityの3経路が用意された。地域別の除外は示されておらず、全世界で順次展開するとしている。
API料金は発表時と同じく、導入価格が100万トークンあたり入力2ドル・出力10ドル(キャッシュ済み入力は95%引き)。今回、導入価格の期限が2026年11月30日と明示され、その後は入力4ドル・出力20ドルになる。トークン上限は入力と出力を合わせた100万トークンの統合枠で、長い出力を複数回に分けて続ける「継続プロトコル」も開発者向けに文書化された。
新たに示されたベンチマークは、ロボット向けの身体性推論を測るERQAが87%、Gamow Labsの非公開評価で希少疾患の診断支援を問うRareBenchが57%、ウェットラボでの実験推論を問うLabBenchが52.2%。金融・コーディング・法務・税務をまとめたVals Indexでの首位も改めて掲げた。
9月30日の発表時点で未定だった4項目
前回の発表では、一般提供の日程、Ultra以外のプランでの提供、導入価格の期間、入力側のコンテキスト長がいずれも明らかにされていなかった。今回それぞれ、発表から13日後の一般提供、GeminiアプリとAIモードでのPro加入者への開放、11月30日までの導入価格、入出力合計100万トークンという形で答えが出た。
コスト面では、導入価格の残り期間が約7週間しかない点が大きい。導入価格はOpenAIのGPT-6.1 Solと同額だが、12月からはその2倍の単価になる。1ドル150円換算で、100万トークンあたり入力約300円・出力約1,500円から、入力約600円・出力約3,000円に上がる計算だ。API経由の本番運用を見積もるなら、通常価格の側で試算する必要がある。
個人プランで見ると、Pro加入者が使えるのはGeminiアプリとAIモードまでで、AntigravityはUltra限定のまま据え置かれた。Argonをコーディングエージェントとして長時間動かす使い方は、UltraかAPIの従量課金が前提になる。
安全性報告:模擬攻撃12シナリオを完遂、思考過程には罰則をかけない
同時に公開された安全性報告では、サイバー領域の能力の伸びが数字で示された。エンドツーエンドの模擬サイバー攻撃12シナリオのすべてを完遂し、前世代の5シナリオから大きく増えた。Googleはサイバーと生物学の両領域で能力の上昇を確認したとして、Frontier Safety Frameworkに沿った次世代の安全策を両領域に適用した。外部の専門家による生物分野のジェイルブレイク試験では、検証したサブタスクのうち制限を解除できたのは1%未満だったという。
安全策は3層で構成される。入力段階で小型モデルが悪意ある依頼を検査し、モデル内部の活性化を読み取るプローブでサイバー攻撃や生物学的脅威に関する知識の呼び出しを検知し、推論の途中でも監視信号を合算してエージェントを止められるようにした。間接プロンプトインジェクションを測るGray Swanのベンチマークでは、15回の適応的攻撃での成功率が0.7%だった。
報告の中で目を引くのは、思考過程(チェーン・オブ・ソート)への罰則に関する実験だ。コーディング課題での「近道」を思考過程上で罰する学習を試したところ、思考過程で近道に言及するケースは61%減ったものの、言及せずに近道をとるケースが11.2%から36.4%に増え、近道そのものは減らなかった。Googleはこの結果を受けて、学習時に思考過程の内容へ罰則をかけない方針を示した。OpenAIも2025年3月の研究で、推論モデルの「悪い思考」を罰すると不正が思考過程から見えなくなるだけだと報告しており、思考過程を監視の手がかりとして残す判断で両社がそろった形になる。
アクセス施策では、Fairwindプログラムを数百の組織に拡大し、サイバー防御担当者がガードレールなし版に随時申請できるようにした。研究者向けには、1万人を対象にAntigravityの最上位利用枠を6か月無償で提供する募集も始めている。




