OpenAIは10月29日(米国時間)、自社モデルに求める振る舞いを定めた公開文書「Model Spec」の改訂版を公開した。個別の行動規則を並べる構成から、5つの根本的な価値を軸に指針を整理し直す構成へ変えたことが今回の中心である。
5つの価値は、人間の意図への忠実さ、害の最小化、誠実さと透明性、人間の主体性の促進、配慮。OpenAIはこれらを新たに持ち込んだものではなく、仕様全体にすでにあった姿勢を明文化したものと説明している。土台に置かれたのは意図への忠実さで、指示を字面どおりに実行するだけでなく、OpenAI・開発者・ユーザーそれぞれが何を意図しているかをくみ取ることを求める。転職先の比較を手伝う場面なら、ユーザーが以前に話した「勤務時間が読めること」といった優先順位を参照してよいが、その前提は明示し、ユーザーがすぐ訂正できるようにする、という例が示された。
追加されたのは、どの指示が優先されるかと矛盾の解き方をまとめた指示の優先順位の更新版、会話やメモリなどの文脈をどう使うかを扱う「文脈の慎重な考慮」、人間の主体性の支援と社会的規範の遵守に関するデフォルトである。作業が第三者に及ぼす副次的な影響の抑制と説明についての指針も広げた。一方で、文体に関する細かな規定の大部分は廃止した。文体は言語や文化、個人の好みに合わせるべきだという理由で、問いに客観的な立場で向き合うといった重視すべきデフォルトは残している。モデルの用途が広がったことを受け、仕様内での呼び方も「アシスタント」から「GPT」に改めた。
Model Specは2024年5月に初版が公開され、2025年2月の大幅改訂、同年12月の10代向け保護の追加と、これまでは主に条項を足す形で更新されてきた。今回は条項を増やす前に、各規定がなぜあるのかを5つの価値に結びつけ直した点が過去の改訂と違う。OpenAIは並行して、モデルが価値そのものを学び、仕様に書かれていない場面にも適用できるようにする訓練手法を研究しているとし、成果は今後公表するとした。規則の列挙より理由の説明を重視する設計は、Anthropicが2026年1月に公開したClaudeの新しい「憲法」でも打ち出されており、大手2社の行動指針が同じ方向に寄ってきている。なお、Model Specは目標とする振る舞いを記したもので、現行モデルがそのすべてを満たしているわけではないとOpenAI自身が断っている。




