Google DeepMindは10月30日、英国政府と共同開発してきた建築計画審査の支援ツール「PlanAssist」について、3つの自治体での試験運用の結果と、今後12か月の本格試験の計画を公表した。住宅の増改築申請の審査で、担当官が1件にかける時間が平均58%短くなったという。
PlanAssistはGeminiを基盤とし、Google Cloudと英国のAI企業Facultyが開発に加わった。対象は「householder application」と呼ばれる住宅所有者による増築・改修の申請で、担当官の業務量の最大7割を占める定型業務にあたる。ツールは提出書類や図面に必要な情報がそろっているかを確認し、文化財指定や樹木保護命令といった敷地の制約、国と自治体の計画政策との照合、過去の異議や住民意見の有無の確認を行ったうえで、出典付きの審査報告書の草案を作る。試験では、AIが作った報告書の7割超が担当官による修正なしで承認された。
試験に参加したのはロンドンのBarnet区とCamden区、イングランド南西部のDorsetの3自治体。今後12か月のベータ段階では実際の申請を対象に運用し、新たに12自治体を3つのグループに分けて順次追加し、計15自治体に広げる。結果次第で2027年にイングランドの全自治体への提供を目指す。どの段階でも、許可・不許可の最終判断は資格を持つ担当官が行う。
この取り組みが最初に公表されたのは今年6月で、その時点ではツール名がなく、目標は「判断時間の50%削減」とされていた。今回の発表で名称がPlanAssistとなり、試験の実測値は当初目標を8ポイント上回った。6月時点の説明では、英国政府のAIチームi.AIがGeminiで作った文書読み取りツール「Extract」が土台にあるとされ、Extractは同月にイングランドの全自治体で利用可能になっている。過去の計画文書をデータ化するExtractの上に、政策照合と報告書作成を担うPlanAssistを重ねる構成で、今回の対象拡大はその後段を実務に組み込む段階にあたる。
背景には、英国政府が掲げる「2029年までに新築住宅150万戸」という目標がある。政府は審査の遅れが住宅供給の足かせになっているとして、計画制度の効率化を進めている。Google DeepMindは2025年12月に英国政府、英国AI安全研究所(UK AI Security Institute)との提携を発表しており、PlanAssistはその枠組みで進む案件の一つ。同社は10月にもシンガポール政府と端末上で動く詐欺検知モデルを共同開発しており、政府の個別業務に合わせたGeminiの適用事例を国ごとに積み上げている。


