OpenAIは9月9日、9月3日に公開した最新モデル「GPT-6 Astra」の業務向け提供を明らかにした。ChatGPT Work、Codex、APIの3経路で使えるようになり、あわせて管理者が利用範囲を絞るための企業向け設定と、業務アプリに接続するプラグインが追加された。
今回の発表は、モデルの性能そのものよりも「どこで動かすか」に寄っている。OpenAIはAstraがコンピュータ操作・ブラウジング・業務処理・ソフトウェア開発・サイバーセキュリティ・科学の各分野で最高水準だとしたうえで、企業がデータを整え直したり、ワークフローを作り替えたり、独自の連携を実装したりしなくても初日から使い始められる点を強調している。
社内での適用例も具体的に挙げられた。開発チームとマーケティングチームはAstraとCodexを使い、3時間分のマルチカメラ映像を1本の紹介動画にまとめ、公開4日で55万回再生に達したという。エンジニアリングチームは、テスト環境でCodexのセッションが遅くなる原因だったメモリ割り当てのボトルネックをAstraに特定させ、アロケータを差し替えることで1ターンあたりの遅延を25分の1にした。引き換えにピーク時のメモリ使用量は約30%増えている。
APIのないアプリを画面越しに動かす
業務向けの売りとして前面に出ているのは、APIを持たないアプリケーションでも、人間が使うのと同じ画面を操作して作業を進められる点だ。これまで社内システムをAIに触らせようとすると、APIを新たに用意するか、RPAのように画面上の要素と手順をあらかじめ定義しておくかのどちらかだった。前者は改修コストがかかり、後者は画面の作りが変わるたびに壊れる。画面を見て判断しながら操作するモデルは、この2つの前提そのものを外しにいくアプローチになる。
コスト面では、同じ作業をより少ないトークンとより少ないやり直しで終えるように訓練したと説明している。OpenAIはTerminal-Bench 4.0とArtificial Analysis Intelligence Indexにおいて、コスト効率のフロンティアの大半を自社モデルが占めていると主張する。ソフトウェア開発では、データ企業Datacurveが自社のDeepSWE v1.1でAstraが74%という最高値を、これまでの先端モデルより少ない手順と少ないトークンで記録したとコメントを寄せている。API料金は入力100万トークンあたり10ドル、出力50ドルで、9月3日の公開時から据え置かれた。1ドル150円換算なら入力約1,500円、出力約7,500円になる。
安全性の担保は管理者側の設定に置かれた
社内システムをAIに触らせることへの懸念に対しては、管理者が使える制御をまとめて追加した。アクセスできるWebサイトとデスクトップアプリを許可制にする、ファイルのアップロードとダウンロードを管理する、閲覧履歴を制御する、といった項目が並ぶ。ChatGPT WorkとCodexには、影響の大きい操作の前に人の承認を挟むconfirmation policiesと、危険または未承認のツール呼び出しを自動で検査する仕組みも入る。狭い設定から始めて段階的に広げる運用を想定した作りだ。
安全性の根拠として示されたのは、OpenAIの社内ベンチマークの数字だった。機密情報を外に出す、ダッシュボードを広く共有しすぎる、データを消してしまうといった業務上まずいシナリオを集めた評価で、意図しない結果が起きた頻度はGPT-5.6 Solより89%、Claude Fable 5.1より74.7%少なかったとしている。ただしこれはOpenAIが自社で設計・実施した評価で、第三者が同じ条件で再現したものではない。他社モデルとの比較値を読むときはこの前提が要る。
Enterpriseは既定オフからのスタート
接続先も広げている。ChatGPT Desktopには、Oracle Analytics、Power BI(Microsoft Fabricのサービス)、Navan、Avalaraの企業向けプラグインが加わった。ブラウザ操作の機能を使って、普段業務で開いている画面にそのまま届かせる狙いだ。対象となるAPI顧客には、承認を条件に入力データを保持しないZero Data Retentionも用意される。
もっとも、導入する側から見た出発点は「オフ」である。Enterpriseではローンチ時点でAstraへのアクセスが既定で無効になっており、管理者が自社の料金体系と契約のもとで有効化しない限り、社内のChatGPTが自動でAstraに切り替わることはない。Astraは9月3日の発表で、OpenAI自身のPreparedness Frameworkにおいてサイバー能力が初めてCritical判定を受けたモデルでもある。既定オフという設計は、その判定と対になっている。




